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横浜市の男女共同参画センターによる働きづらさに悩む「ガールズ」サポート

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2021年2月

「ゆっくり進む、就労移行支援を活用する」体験談&講座レポート!

 

こんにちは。ガールズ講座担当のスタッフYです。

寒い日が続きつつも、少しずつ春の気配が漂う時間が増えてきたような気がします。

花粉症である私にとっては、やや複雑な気分でもありますが、

それでもあたたかい日差しを浴びると、気持ちもほんのり和らいでくる気がします。

 

みなさんは、「就労移行支援」という制度・サービスをご存知ですか?

体調が安定しない方や、仕事に就くにあたって不安を感じる方などに、

事業所へ通う形で、それぞれのペースに合った知識や支援を提供するものです。

障害者総合支援法に規定された、障害者福祉に関する制度の枠組みになっていますが、

医師の診断を受けていれば、障害者手帳を持っていない場合でも利用できる場合があるので、

さまざまな方に広く認知・利用していただきたいサービスです。

 

1/20(水)、この就労移行支援について学ぶ講座を、フォーラム南太田で実施しました。

題して「仕事とくらしのセーフティ講座 ゆっくり進む、就労移行支援を活用する」。

今回は、この講座の内容をダイジェスト版として、お裾分けできたらと思います。

 

この日は、就労移行支援を活用して企業へ就職したKさんにお越しいただいて、

ご自身のこれまでの体験談を語っていただきました。

Kさんは、フォーラム南太田のガールズ講座・めぐカフェ就労体験を修了した方でもあり、

修了後のしごとや暮らしの様子をお聴きできる、貴重な機会ともなりました。

 


 

1.体験談

 

<フォーラム南太田からのインタビュー>

Q. 以前めぐカフェで働いてくださいましたが、フォーラム南太田に来られるようになったきっかけは、何だったのでしょうか。

A. 前の仕事を辞めて、心療内科へ通い始めたころ、近所の図書館でガールズ講座のチラシを見て知りました。講座とめぐカフェ就労体験に続けて参加し、修了後はめぐカフェでアルバイトをしました。アルバイトでは、だいたい週に2回くらい出勤していました。

 

Q. 就労移行支援を利用しようと考えたきっかけは、何だったのでしょうか。

A. めぐカフェに通うことに慣れてきても、他の場所で働くためのチャレンジは、自分ひとりでは難しいと感じていました。そんな時、よこはま若者サポートステーションでの相談で、就労移行支援事業所のココルポート(後述)を紹介してもらい、通うようになりました。

(※注 めぐカフェ就労体験では、よこはま若者サポートステーションをはじめとする若者支援機関などでの継続相談を参加の条件としています。)

 

Q. ココルポートさんへの通所の決め手は、何だったのでしょうか。

A. 便利な場所に事業所があったのと、ダンスや音楽といった独特なプログラムがあって、仕事に関する内容ばかりではなかったので、通いやすいかなと思いました。

 

Q. ココルポートさんではどんなプログラムを利用していましたか。

A. 入るときには、いろいろ受けてみようと思っていました。メンタル面が自分の課題だと認識していましたが、すぐに受けるのはきついと感じたので、最初はダンスやパソコンといった、メンタルに直接関係しないところから受けていきました。受けるプログラムは担当のスタッフさんと相談しながら、アドバイスをもらったり自分で選んだりして決めました。

 

Q. 就労移行支援を利用するにあたって、新たに障害者手帳を取ったのですか。

A. めぐカフェ就労体験の前から通院している状態だったので、明確な時期は覚えていないものの、就労移行支援を利用する前から手帳を取得していました。取得を考えていた時には自分の中で大きな葛藤があり、悩みもしましたが、周りのひとは自分の選んだことを応援したり励ましたりしてくれました。

 

Q. ココルポートさんへはどのくらい通っていたのですか。

A. 最初は週1日程度でしたが、多く通っていた時期では、一週間のうちめぐカフェでのアルバイト1日、ココルポート4日、といった感じでした。入るときに、就職までの通所期間の目標を定めている人が多くて、自分も1年半ほどで就職したいと考えていましたが、結果的にほぼ2年間通いました。

 

Q.就職活動では何社くらい受けたのですか。

A.  2社です。自分は働くためのスキルよりも、面接などでの気持ちの面が課題だったので、スタッフの方に助けていただき、時には一緒に考えていただきながら、そういったところの対策もしました。今の職場の面接を受けた直後は失敗してしまったと感じていましたが、たくさん練習したおかげでなんとか入れたのかなと思っています。

 

Q. 今は在宅勤務中だとお聞きしましたが、どんなお仕事をしているのですか。

A. パソコンを使った事務作業をしています。1年ちょっと前に入社した時は6時間の時短勤務で、現在は7時間、来月からはフルタイムの8時間勤務になる予定です。最初はデータ入力などオーソドックスな事務作業に従事していましたが、いまは社内ホームページや社内報の編集などをしています。会社の体制も手厚く、月1回の面談などでサポートを受けています。

 

Q. 仕事を始めてからも、ココルポートさんの支援を継続して受けているのですか。

A. 在宅勤務になる前は、月に1回オフィスで、会社、ココルポート、自分の3者で面談をしていただいていました。いまは感染症拡大の影響で、電話か事業所で面談を受けています。相談したい時はいつでも電話してと言われているので、安心感を持てています。

 

Q. 働きながらたいへんに感じていることはありませんか。

A. 外資系の会社なので、英語に触れる機会が多いことには苦労していますが、逆に新しいことにチャレンジする機会だと考えて、前向きにとらえるようにもしています。不安を完全に消すことはできないとしても、不安を感じながらがんばる方法をココルポートで学ぶことができたし、今もその効果があるのではないかと思っています。職場での対人関係なども、全く問題ないということはないですが、「仕事としてのコミュニケーション」として割り切ってしまえれば、すごく支障が出るということもありません。

 

Q. 仕事に関して、よかったなと思うことはありますか。

A. 就労移行支援を利用することで、スタッフの方と一緒に自分のコンプレックスに向き合うことができて、そのおかげで今の仕事にも就けたのだと思います。こうした経験もあって、つまづいたと感じたことがあっても、前よりもがんばって立ち上がれるようになったし、自分に起こった出来事をポジティブに考えることができるようにもなりました。

 

<参加者のみなさんからの質問>

Q. ココルポートさんに通ったり仕事をしたりする中で、人間関係についての捉え方は変わりましたか。

A. 自分ひとりでいると、どうしても状況を悪い方へ考えてしまう癖があって、そのせいで実際の状況も悪くなってしまう、という傾向があったのですが、ココルポートのスタッフの方や主治医の方、家族といった第三者に相談して、自分の状況について一緒に考えてもらうことで、悪い方向へ考えが向かいそうなところで「引っ張りあげて」もらうことがありました。もともと相談するのは苦手だったのですが、ココルポートで支援を受けるようになってから意識的に相談するようにしてみて、結果的にだいぶ楽になりました。

 

Q. 休日の過ごし方や息抜きなどは、どのようにしていますか。

A. ココルポートへ土曜日に通所すると、余暇についてのプログラムが用意されていて、散歩やクッキングといったメニューを通して他の通所者の方と話し合える時間もありました。たくさん利用したわけではありませんが、休日に楽しいことをする大切さは、そうした場面で気がつくようになりました。最近では(感染症拡大の影響で)友人と直接会いづらい状況なので、LINE通話をしながら何かをしたり、DIYとして仕事用の机を作ったりしています。

 

Q. ココルポートさんへ通っていた時、他の利用者の方と関わったり、友人ができたりなどしましたか。

A. 通い始めたころは緊張していて、周りのひとと話す余裕もありませんでしたが、通ううちに話しやすい方が見つかったり、プログラムで席が隣になった人と話すようになったりして、お昼休みを一緒に過ごしたりするようにもなりました。

 

Kさんには、30分ほどお話いただきました。

とても丁寧に話してくださって、質問にも答えていただき、ありがとうございました!

 

  

また、Kさんが利用している就労移行支援事業所である、

株式会社ココルポート・横浜関内Officeスタッフの渡邉順子さんにもお越しいただいて、

支援の内容や通所時の様子などを説明していただきました。

いくつかのポイントに分けて、内容を簡単にお伝えします。

 

2. 就労移行支援の紹介

 

<ココルポート・渡邉さんからのお話> ※スタッフYによる要約です。

①仕事の「土台」からのサポート

 就労移行支援は、仕事の探し方や業務処理のテクニックを提供するだけではありません。

 むしろ、仕事の「土台」となる、生活や健康といった自分の状態に重点が置かれています。

 具体的には、食事や睡眠、服薬といった、心や身体の健康管理を基礎ととらえたうえで、

 生活リズムや金銭管理といった日常生活や、身だしなみ、会話といった社会生活、

 そして職場の一員として過ごす上での労働習慣と、段階的に支援が進んでいきます。

 

②個別のペースと目標に応じたサポート

 ひとりひとりの段階、ペース、目標に合わせて、準備からトレーニング、就職活動へと、

 スタッフの方と相談しながら、その時の自分に合った支援を受けることができます。

 支援の利用期間は最大2年間ですが、早い方は半年で就労へ至ることもあるそうです。

 

③多様なプログラム・軽作業ツールの提供

 トレーニングの段階では、様々なプログラムを受けることができます。

 今や働くうえで必須ツールとなりつつある、パソコン関連のメニューをはじめ、

 グループワークやビジネスマナー、就職活動のコツなど、役立つプログラムが多いです。

 軽作業ツールは、CD検品やボールペン組み立て、ビーズ仕分けといったメニューがあり、

 効率よく作業をする力や、細かい連続作業に集中して取り組む力を培うことができます。

 一方で、ダンスや農作業、合唱といった、運動やリラックスのプログラムもあります。

 (Kさんも通所の決め手になってとおっしゃっていましたね。)

 ここからも、仕事をするうえでの「土台」が重視されていることがうかがえます。

 

④就労定着支援の提供

 ここまでは就労移行支援についての内容ですが、この支援を実施する事業所の多くは、

 「就労定着支援」という行政・福祉サービスも同時に提供しています。

 就労移行支援と同じく、障害者総合支援法に規定されている制度ですが、

 就労移行支援が就職する「まえ」の支援であるとすれば、

 就労定着支援は就職した「あと」の支援である、と考えると分かりやすいかもしれません。

 就職後約半年のあいだ、会社で安心して働き続けることができるように、

 定期的に相談を受けたり、場合によっては会社との調整を担うなど、様々な支援を提供します。

 会社の人には言いづらい相談もできるので、就職後の不安も和らぐかもしれません。

 Kさんもこの支援を利用して、現在も事業所での面談を続けています。

 

<参加者の方からの質問に答えて>

・費用面について

前年度の収入によって、利用にかかる本人負担の額と区分が決まります。

ココルポートさんでは、90%以上の方は自己負担のない区分に当てはまるそうです。

 

・障害者手帳の取得や医師の診断について

この記事の冒頭でも書きましたが、障害者手帳の取得は必須ではありません。

まずは事業所へ相談し、スタッフの方と生活や通院の状況を共有して相談しながら、

通所のために必要な手続きを行っていくことになるとのことでした。

もちろんKさんのように、あらかじめ障害者手帳を取得しているのであれば、

より気軽に利用することができます。

 

・いわゆる「コロナ禍」における支援の実施について

現在は、感染症の拡大状況を踏まえ、在宅で受講可能なプログラムもあるそうです。

Kさんが従事しているようなテレワーク・リモートワークにも、対応できそうですね。

 

 

渡邉さんには、質問にも親身になってお答えしていただきました。

仕事をすること、暮らしを立てること、自立することなどに悩んだり不安を感じたりしたとき、

自分に合ったペースで仕事と付き合い、これからも暮らしていくための一歩として、

こうした支援があることを、いつかまたみなさんに思い出していただけたらと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

フォーラム南太田(男女共同参画センター横浜南)

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